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美術手帖にて公開|アートと気候危機のいま vol.5 アーティスト兼環境リーダー、ジェーン・ローソン(後編)

TOTAL ARTS STUDIES(TAS) プログラム・ディレクター、ロジャー・マクドナルドによる、美術手帖ウェブ版での気候危機とアートについての連載記事シリーズ「アートと気候危機のいま|Art and Climate NOW」。海外の動向の「いま」をわかりやすく紹介する連載の第5回は、マンチェスターを拠点に活動するアーティスト、ジェーン・ローソンへのインタビューへのインタビュー後編をお届けします。

前編はこちら


──あなたは異常気象が頻発するヨーロッパに住んでいますが、これから先10年で、気候危機は、そして私たちの日常生活はどうなっていくと思いますか?

英国では、政権与党がほとんどプラスに機能しておらず、これ以上悪くなりようがないというところまできました。そして、世論はついに政権に対し、はっきりとした意思表示をするようになりました。たとえばそれは、現在行われているさまざまなストライキを多くの国民が支持していることからも見て取れます。

今後10年以内に、民意が気候変動対策を大きく後押ししていくだろうと思いますが、10年後にようやく実行されるのでは遅いのです。その頃には、少なくとも(産業革命前からの世界平均気温上昇を)2℃に抑えなければならないという大きな壁が立ちはだかっているでしょう。異常気象がますます増え、日常生活への影響も甚大化しているはずです。私が住むマンチェスターでは、過去2年間に2度、洪水によるレッド警報(生命への危険がある)が発令されましたが、これは10年前には考えられなかったことです。そして、北半球に暮らす裕福で比較的保護されている私たちがまず知るべきは、世界で最も裕福な10%の人々が二酸化炭素の50%を排出し、最も貧しい50%の人々は二酸化炭素の10%しか排出していないということです。[*]

* 参考記事:「もう一つの「共通だが差異ある責任」。CO2排出量の50%は世界上位10%の富裕層に排出責任。 下位50%の貧困層の排出量は10%だけ。英NGOが報告書で指摘(RIEF)。」(一般社団法人環境金融研究機構、2015年)https://rief-jp.org/ct8/56641

ジェーン・ローソン Soil Fungus Carbon Care

──環境問題についての情報はどこから得ていますか? 具体的なウェブサイトや書籍などはありますか? また、同じような考えを持つ友人と話をしたり、情報やヒントを共有したりすることはありますか?

情報は、さまざまなところから得ています。たとえば、気候心理学者でアクティビスト、エデュケーターのジェシカ・クレチカ(Jessica Kleczka)による「ポジティブ・クライメート・ニュース(Positive Climate News )」。破滅的な終末論的気候主義(Climate Doomism)が蔓延しつつある中で、気候危機を踏まえながらも前向きな情報を発信しており支持を集めています。

バイク・ブロック」ウェブサイトより

気候科学者のキンバリー・A・ニコラス(Kimberly Nicholas)の著書『アンダー・ザ・スカイ・ウィー・メイク(Under the Sky We Make)』を読んで以来、彼女が自身のウェブサイトで発信する情報を追っています。

記事の続きを読む(ウェブ版美術手帖)>>>

TOP画像:ジェーン・ローソン  The Detoxification of Capitalism and Freedom (2014)


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アートがもつ表象の力、美術史や言説と気候危機の関係、そして具体的な実践について、AITの活動全体を通じて追求していきます。アート・オンライン講座「崩壊の時代の芸術体験」コースやTASで行っている講座と合わせてご活用ください。

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