Roger McDonald
数多くの芸術団体が気候変動に関するアクションを行なっています。AITがピックアップした事例を年代順にご紹介します。
2005| 2009|2011|2013|2014|2015|2016|2018|2019|2020|2021
4月:気候変動と表象の問題についてのビル・マッキベン氏によるGristの記事「What the warming world needs now is art, sweet art(温暖化した世界が今必要としているのは、芸術、甘い芸術だ)」。アートには大きな役割があると指摘する。https://grist.org/article/mckibben-imagine/
コペンハーゲン(デンマーク)、クエルナバカ(メキシコ)、メキシコシティ(メキシコ)、LA(アメリカ)にてアートとジェンダー、気候変動についての巡回型展覧会「(RE-)CYCLES OF PARADISE」を2013年まで開催。https://artport-project.org/portfolio/re-cycles-of-paradise/
オーストリア、ウィーンのコレクターでもあるフランチェスカ・フォン・ハプスブルクが、ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団内に非営利活動「TBA21-Academy」を立ち上げた。学問領域を横断したリサーチを依頼して、アーティストや科学者、思想的指導者と協働でアートの視点からクリエイティヴなソルーションを探っている。https://www.tba21.org/
世界文化会館(HKW)とマックス・プランク科学史研究所(MPIWG)の共同で、人新世時代における長期的な学びのイニシアティヴ「アントロポセン・カリキュラム(The Anthropocene Curriculum)」が立ち上がる。アーティストや学者、先住民の知恵を共有し、気候危機を共に考える。これは、人類が支配する新たな地質学的エポック「人新世:アントロポセン」への移行が進む中、重要な知識と教育の枠組みを探る長期的な取り組み。世界中から研究者やアーティスト、活動家を招き、こうした危機に対応するためのカリキュラムを共同開発することで、多分野の知識実践を行う。地理的・社会的な危機に瀕している知識に明確に取り組み、実験的な共同学習と分野を超えた協力に向けて研究の可能性を広げる。2018年よりカナダを皮切りに、5年間かけて巡回展を行っている。https://www.anthropocene-curriculum.org/ https://theanthropocene.org/exhibition/
3月 – 8月:デン・ハーグ美術館にて「Yes, Naturally: How Art Saves the World(アートはいかにして世界を救うか)」展が開催。「自然とは何か、誰が何を決めるのか」また「発言権があるのは人間だけなのか、それとも動物や植物、無生物にも役割があるのか」重要な問いが投げかけられている。フランシス・アリス、ジミー・ダーラム、オラファー・エリアソン、アトリエ・ファンリースハウト、ゼーガー・レイアーズ、スーパーフレックス、アイ・ウェイウェイなどの作品が展示された。https://www.kunstmuseum.nl/en/exhibitions/yes-naturally
5月 – 9月:気候危機と経済的混乱の文脈から、世界の終焉とテクノロジーによる変革の可能性を考える展覧会「Dark Optimism(暗黒の楽観主義)」がニューヨークのMoMA PS1で開催。”日常生活に劇的な影響を与えている経済的混乱と社会政治的激変を背景にした、世界的なエコロジーの課題に対し、雑誌と編集者コレクティヴであるトリプルキャノピーは、「Dark Optimism(暗黒の楽観主義)」を呼びかける。これは、世界の終わりと始まりの両方を包含する態度であり、黙示録の瀬戸際における、前例のない技術的変革の始まりでもあるのだ。” (展覧会テキストより)https://ecoartspace.blogspot.com/2013/07/sue-spaid-reviews-expo-1-new-york-dark.html?m=1
11月3日 – 2014年3月16日:ワシントン州ベリンガムにあるワットコム博物館で開催された、世界の氷と気候変動の関係をアート作品から考える展覧会「Vanishing Ice:Alpine and Polar Landscapes in Art, 1775 – 2012(消えゆく氷:アートで見るアルプスと極地の風景 1775-2012) 」。気候変動によって危機に瀕している地球の凍てつくようなフロンティアの豊かな芸術的遺産を紹介。展覧会では200年以上もの間、芸術家や作家、自然主義者たちにインスピレーションを与えてきた崇高な風景の威厳を、別の視点から体験できる。https://www.artnews.com/art-in-america/features/art-for-the-anthropocene-era-63001/
スミソニアン博物館は、シンポジウム「Living in the Anthropocene: Prospects for Climate, Economics, Health, and Security(人新世時代:気候、経済、健康、そして安全の可能性)」にて、これまでの調査結果を一般開放するとともに、世界中の研究者たちと、気候変動が与える自然への影響を引き続き調査することを発表。https://www.si.edu/newsdesk/releases/smithsonian-statement-climate-change
9月13日 – 2015年1月4日:台北ビエンナーレ2014にて、ニコラ・ブリオーが展覧会「The Great Acceleration: Art in the Anthropocene(大加速:人新世の芸術)」を企画、開催した。人間の活動は、何千年にもわたって地球を変化させてきた。現在、すべての生態系に人間の痕跡が残っているが、科学者たちが「グレート・アクセラレーション(大加速)」と呼んだ近年60年間の変化の規模とスピードから、「人新世:アントロポセン」という新しい地質学的な時代を名づけた。これは、人間の活動が地球の大気や地質の進化に強い影響を与えていることを示す時代である。https://www.taipeibiennial.org/2014/en/index.html
10月18日 – 19日:ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーにて「Extinction Marathon: Visions of the Future(絶滅マラソン:未来のビジョン)」というイベントを企画。アーティスト、科学者、音楽家、映像作家、ダンサーや理論家が「絶滅」をテーマにプレゼンテーションやパフォーマンスを行った。同じ時期ギャラリーでは、グスタフ・メッツガーの回顧展が行われた。https://www.serpentinegalleries.org/exhibitions-events/extinction-marathon-london-premiere-seeds-time
このイベントの結果の一つとして、サーペンタイン・ギャラリーでは、「General Ecology」というプロジェクトが立ち上がり、世界で初めて新しいキュレーターのポジションがつくられた。これは美術館の環境影響を検証し、展覧会やイベント、出版物のほかラジオで気候変動について考えていく試みだ。https://www.serpentinegalleries.org/exhibitions-events/general-ecology
9月:ライターのボブ・ディッキンソン氏による記事「Art and the Anthropocene(アートと人新世)」がArt Monthly 389(アート・マンスリー2015年9月号)に掲載される。現代アートは、人新世と呼ばれる時代にどのような取り組みを行なっているのか、事例を紹介している。 http://www.artmonthly.co.uk/magazine/site/article/art-and-the-anthropocene-by-bob-dickinson
2010から2015年に大手石油会社に対するデモが相次ぎ、BP社(British Petroleum)は、テート美術館(ロンドン)への27年間続いたスポンサー契約を2017年に解消することを発表した。https://www.ft.com/content/fc89bc54-e78f-11e5-bc31-138df2ae9ee6
個人的で共同的なファイバーアートやクラフト、環境意識、データ・ビジュアライゼーションを通じた気候変動への取り組みを、友人やアーティスト、工芸家、教師、科学者、活動家、自然愛好家などの広大なコミュニティで展開するプロジェクト「テンペストリー・プロジェクト」が立ち上がる。編み物や織りスカーフで気候変動の温度やデータを表す、ゆるい世界的運動。https://www.tempestryproject.com/
8月:ファン・ゴッホ美術館とマウリッツハイス美術館は、抗議と請願に続いて、大手石油会社シェルとの長年にわたるパートナー契約を解消した。https://www.theartnewspaper.com/2018/08/29/shell-sponsorship-deal-with-amsterdams-van-gogh-museum-ends
9月 – 2019年1月:イタリアのFondazione MASTとの連携により、オンタリオ美術館とカナダ国立美術館のカナダ写真研究所が主催した展覧会「ANTHROPOCENE(人新世)」では、写真家と映像作家が気候変動についての新作を発表した。世界的に有名な写真家エドワード・バーティンスキーと、数々の賞を受賞している映像作家ジェニファー・バイチウォル、ニック・ドゥ・パンシェは、フィルムを拡張した大規模な壁画やフィルムインスタレーション、拡張現実(AR)インスタレーションなど、私たちと深いつながりがありながら普段は見ることのできない場所へと誘う、パワフルな新作写真シリーズを制作した。アーティストたちは、南極大陸を除くすべての大陸の国々を訪れ、人間の活動による取り返しのつかない痕跡を記録。科学的研究から得た情報、美的感覚、目撃者になりたいという願望から生まれた彼らの作品は、私たちが地球に与える影響の大きさと重大さを明らかにする。https://ago.ca/exhibitions/anthropocene
9月 – 2019年3月:気候変動や人新世を考える展覧会「The World to Come: Art in the Age of the Anthropocene(来たるべき世界:人新世の時代のアート)」がフロリダ大学内のサミュエル・P・ハーン美術館にて開催。現代の国際的なアーティスト45名による作品を通して、急速で急激な、そして取り返しのつかない生態系の変化の時代を描く。我々は、差し迫った絶滅、暴走する気候変動、生物多様性と資源の枯渇の世界に生きている。https://harn.ufl.edu/theworldtocome
10月:ロンドンのナショナルギャラリーは、大手石油会社シェルとの12年間のスポンサー契約を終了した。https://www.theguardian.com/business/2018/oct/19/shells-ends-national-gallery-sponsorship-to-delight-of-campaigners
10月 – 2019年1月:北アメリカの歴史と自然界をアートから考える展覧会「Nature’s Nation: American Art and Environment(ネイチャーズ・ネイション:アメリカのアートと環境)」がプリンストン大学美術館で行われた。植民地時代から現在までの絵画、彫刻、版画、ドローイング、写真、ビデオ、装飾品など120点を展示し、さまざまな伝統や背景を持つアメリカの芸術家たちが、環境への理解をどのように反映し、形成してきたか、また現代のエコロジー意識の発展にどのように貢献してきたかを初めて明らかにした。アンセル・アダムス、アローラ&カルサディーラ、アルバート・ビアスタット、トーマス・コール、マーク・ディオン、アーロン・ダグラス、ヴァレリー・ヘガティ、ドロシア・ラングなどの作品が展示された。https://artmuseum.princeton.edu/art/exhibitions/2818
11月:アーツカウンシル・イングランドの議長であるニコラス・セロタは、2018年10月に発表された「IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)」の報告を受けて、英紙『ガーディアン』にて、芸術は、気候変動への取り組みにおいて重要な役割を果たすことを示唆。また、2012年には、世界で初めて環境問題と関連する社会的課題に取り組みを行っている団体への継続的なサポートの強化に取り組んでいることを紹介。https://www.theguardian.com/commentisfree/2018/nov/20/arts-climate-change https://www.artscouncil.org.uk/sites/default/files/download-file/Sustaining_Great_Art_Report_2012_15.pdf
数百万年前のオブジェや絵画、写真など先人が残したコレクションを手掛かりに、環境や自然変化の研究と調査がはじまる。例えば、アラスカのアンカレッジ博物館にあるスミソニアン北極研究センターでは、研究所コレクションの工芸品から地球温暖化の影響を受ける前のアラスカの生活パターンを調査し、気候変動が特定の場所にどのように影響したかを発表。多くの研究者から関心が寄せられている。https://www.theartnewspaper.com/news/from-the-arctic-to-wyoming-smithsonian-artefacts-offer-insights-into-climate-change
3月1日 – 9月1日:イタリア・ミラノで開催された第22回ミラノ・トリエンナーレで、企画展「Broken Nature : Design Takes on Human Survival(自然破壊:人類生存をデザインから考える)」が開催。展覧会は、MoMAのキュレーターであるPaola Antonelliが手がけ、気候変動によって社会や経済が崩壊する危機的状況を、デザインや建築から考察した。 http://www.brokennature.org
5月11日 – 11月24日:第58回 ヴェネチア・ビエンナーレ 国際美術展にて、気候変動に関する作品が多く展示される。カナダ館では、イヌイットでアーティスト・コレクティヴの「Isuma」が長年の映像作品を発表。https://www.labiennale.org/en/art/2019/national-participations/canada
6月13日 – 16日:スイスの「Art Basel」でのトークプログラムにおいて、気候変動とアートをテーマにしたパネルセッションが開催。https://www.youtube.com/playlist?list=PLaQumXw0FTLdadCP9bmEHliExA1WO4u0A
7月:ロンドンのテート美術館は、気候危機に関するリリースを発表。4つの美術館すべてにおいてグリーンエネルギーに切り替えていくことなど、2023年までに二酸化炭素排出量を少なくとも10%削減することを宣言し、環境に配慮した持続可能な方法を模索しコミットしていくことを約束した。https://www.tate.org.uk/press/press-releases/tate-directors-declare-climate-emergency
10月:「Gallery Climate Coalition(ギャラリー気候変動対策連合)」発足。ギャラリストのThomas Dane、Kate MacGarryほか、Lisson GalleryのディレクターGreg Hiltyをはじめ、FriezeのディレクターVictoria Siddallなど、ギャラリストやアート関係者によって設立された非営利団体。https://galleryclimatecoalition.org/
気候危機に対して美術館がとるべき態度や、何ができるかについてのリサーチプロジェクト「Museums for Climate Action」が立ち上がる。これからの世界において美術館はどのような場所として機能していくのだろうか。このサイトでは、美術館が温暖化した世界の課題にどのように取り組むべきかについて、さまざまな考え方を集めている。Rethink(再考)、Reimagine(再創造)、Mobilise(動員)の3つのセクションに分かれている。https://www.museumsforclimateaction.org/
2月:イギリスのNPO「Julies Bicycle」が「We Make Tomorrow summit」を開催。世代を超えた「行動」に焦点を当てたこのイベントでは、クリエイティブ・カルチャーのリーダーや機関と、資金提供者、草の根的な活動家、政策立案者、科学者が一堂に会し、COP26での重要な気候変動交渉に先立ち、気候変動や生態系の緊急事態におけるクリエイティビティ、リーダーシップ、イノベーションの意味を探った。https://juliesbicycle.com/event/we-make-tomorrow-summit/
2月14日 – 2022年7月3日:ブルックリン美術館にて、自然や気候変動と、先住民族のアメリカ大陸を考える展覧会「Climate in Crisis: Environmental Change in the Indigenous Americas(クライメイト・イン・クライシス:アメリカ先住民の環境変化)」が開催された。展示作品の多くは、自然界に対する先住民の理解を示すものがあり、また気候変動が先住民の生活や生存に与える脅威をより直接的に示している。https://www.brooklynmuseum.org/exhibitions/climate_in_crisis
4月:「Galleries Commit(ギャラリーズ・コミット)」発足。ギャラリーズ・コミットは、60以上のニューヨークのギャラリーやアートスペースが、気候に配慮した、回復力のある、公平な未来を実現するために立ち上げた文化芸術関係者主導のグループ。https://www.galleriescommit.com/
10月 – 2021年3月:ウイリアム・ベントン美術館(コネチカット大学)にて、「The Human Epoch: Living in the Anthropocene(ヒューマン・エポック:人新世に生きる)」展を開催。展覧会のタイトルは、コネチカット大学地球科学部の新しい入門コース「GSCI 1000E: The Human Epoch」のタイトルでもある。目的は、学生が地球の仕組みや歴史を学ぶことで、今日の地球環境問題をより包括的で安心感のある光で捉え直すことができるようにすること。https://benton.uconn.edu/anthropocene-exhibition
「Galleries Commit(ギャラリーズ・コミット)」に続き、アーティスト主導の気候危機アクショングループ「Artists Commit(アーティスト・コミット)発足。https://www.artistscommit.com/
4月:「Gallery Climate Coalition(ギャラリー気候変動対策連合)」がベルリンに進出。https://www.theartnewspaper.com/2021/04/19/gallery-climate-coalition-expands-to-berlin
4月 – 6月:コスタリカ現代アート・デザイン美術館にて、展覧会「Next Season : Art and Science in the Face of the Climate Future(気候の未来を見据えたアートと科学)」を開催。アーティスト・イン・レジデンスなどを通じて研究と作品を発表。Next Season展は、適応、緩和、気候変動対策のコンセプトに沿って、気候変動を踏まえた現代アートの研究と科学の交わりを探ることを目的としている。https://www.iisd.org/articles/next-season-art-meets-science-new-exhibition-climate-crisis-costa-rica
8月 – 12月:ウィチタ州立大学エドウィンA.ウルリッヒ美術館で、人新世時代と人間の孤独を考える展覧会「Love in the Time of the Anthropocene(人新世時代の愛)」開催。人新世では、人間は今や、地球上の生活環境を形成する最も強力な力として唯一の存在であることを示した、この不吉な意味合いに直面し、個々の人間はどのように無力感を感じるのだろうか。https://ulrich.wichita.edu/ulrich_exhibition/love-in-the-time-of-the-anthropocene/
気候危機とアート とは?
気候危機とアート
アートがもつ表象の力、美術史や言説と気候危機の関係、そして具体的な実践について、AITの活動全体を通じて追求していきます。アート・オンライン講座「崩壊の時代の芸術体験」コースやTASで行っている講座と合わせてご活用ください。