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ART IN THE OFFICE 2025 ワークショップ『《福来旗(フライキ)》を完成させよう➖織って祈って、みんなでセッション!➖』

「ART IN THE OFFICE 2025」の受賞アーティスト、鬼原美希さんによる社員向けワークショップのレポートです。

「ART IN THE OFFICE」(企画・主催:マネックスグループ株式会社)は、“現代アートが未開拓の表現を追求し、社会の様々な問題を提起する姿勢に共感し、現代アートの新進アーティストを支援する場づくりをしたい”という想いのもと、マネックスグループが2008年から継続しているプログラムです。AITは開始当初から運営協力を行なっています。このプログラムでは、受賞アーティストとマネックスグループの社員が一緒に行う交流イベントも特徴のひとつです。

今回選出された鬼原美希さんは、綴れ織り作家として活動しています。世界中を旅しながら各国の「織る」文化に触れ、訪れた土地でのできごとや感情を織りの作品として発表しています。ART IN THE OFFICEでは、大漁旗の別名でもある《福来旗(フライキ)》を制作。壁面に経糸(たていと)を張り、6日間のライブ織りで作品を完成させました。緯糸(よこいと)には、全国の漁港や自治体などの協力を得て集めた、廃棄予定の大漁旗、漁網、ビニール傘などが織り込まれています。詳しくはこちら

鬼原さんの作品と各国の「織り」の姿を知る

社員との交流イベントでは、滞在制作の最終日に、マネックスグループに所属する20名の方々を迎え、ワークショップを開催しました。テーマは、「セッション」。プレスルームに展示される新作は、大きな目を持つ生き物をイメージしています。その生き物の「おでこ」にあたる部分を、参加者のみなさんと織り上げました。

はじめに、鬼原さんのこれまでの活動についてのお話しがありました。鬼原さんの作品には、語り出したら止まらないエピソードがモチーフとして隠されています。旅先のインドで腹痛に襲われトイレを借りるために近隣の家に飛び込んで助けてもらってから、現地の方とともに一日街を旅したときの自分、歯医者さんで治療を受けたときの自分、アフリカで草原に擬態する動物や、人と動物とが共存するための知恵を織り込んだものなどなど。どのエピソードも鬼原さんのエネルギーとユーモアが感じられるものになっています。織り込むときの密度の細かさを作品によって加減したり、素材にも、現地で出会った素材を取り込んでいたりと、聞けば聞くほど、細かな工夫と視点が盛り込まれています。ただ今回の受賞作品のような、密度が荒く、ほぼすべてをリサイクル素材でまかなう試みは初めてとのこと。

鬼原美希さん

いよいよセッション! 隣の人が選んだのはどんな素材?

鬼原さんの作品と人柄が身近に感じられたところで、いよいよ実際に織ってみます。プレスルームの机にずらっと並ぶのは、鬼原さんがこの作品制作のために集めたカラフルな素材の数々。ノドグロ漁に用いられる専用の魚網や、イカ釣り針、パラソル、大漁旗、そしてマネックスグループから提供されたロゴ入りTシャツなどなど。各素材には、織りやすくなるよう糸状に鬼原さんが加工し、さらに、素材の提供者と用途が記載されたキャプションが準備されていました。参加者も普段は見かけないカラフルな素材に興味津々。悩みながら、織り込む素材を選びます。

北海道から鹿児島まで全国各地から集めた素材と、その由来が記されたキャプション

鬼原さんによる織りのレクチャーを受けたあとは、いざ実践。最初は少し緊張気味だったみなさんもすぐに慣れて、思いおもいに織り込んでいきます。左右と中心部分、3箇所に並んで織ったことで、隣の人の選んだ素材から会話が始まったり、隣同士になった人同士で織り方のアドバイスがあったり。「普段はデスクワークが多いから、身体を動かせるのが楽しい」と、中には2周目、3周目と回る人も。素材を眺めながら本来の姿を想像したり、どうやって織ろうかと悩んだり、会話も盛り上がります。

3箇所に分けて織り進めます

みなさん織り進むスピードが早く、あっという間に残りわずかで完成のところまできました。織りながら鬼原さんと参加者が話す機会もあり、「鬼原さんにとって、織ること=生活の一部となっていることが、とてもよく伝わってきた」というコメントもいただきました。ワークショップに参加した社員さんからは、「あそこは自分が織ったんだ」と作品の前を通りがかるときに自慢しているという声も。こうした交流を通じて、会話のきっかけが広がっていくことを私たちもとても嬉しく感じています。

完成した新作は、1年間マネックスグループ本社のプレスルームに展示されます。

AIO審査員の一人である、松本大さん(マネックスグループ株式会社取締役会議長)も、急遽駆けつけて織り込んでくださいました!

Text: 和田(AIT)


参加者のコメント(抜粋・要約)

  • どんな感じになるのかな~?と思っていたのですが、参加して見たらとんでもなく楽しかったです!数本、織りに参加できたのも満足度高めでした。作品もとても元気の出るもので、見た瞬間テンションがあがる素敵な作品ですね!この1年のマネックスの元気のもとになると思います。ありがとうございました♡
  • 私にとって織物は、道具や技術が必要でハードルが高いもの、というイメージでした。鬼原さんのキュートなお人柄や旅のエピソードはとても面白く、世界の日常に「織り」が存在していて、織物は国境を越えた共通言語になる、ということは大きな気づきになりました。今日みんなで一緒に織ることができたことも含めて、すごく温かいエネルギーをもらえる良い体験になりました。みなさまありがとうございました!!
  • 鬼原さんの作品が素晴らしいだけでなく、鬼原さん自身も楽しく魅力的な方で大変楽しく過ごしました。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が大好きで開催される度に行くのですが、今回は自分自身もそれに参加しているアーティストになったような気分を味わうことができました。今後社内で作品を見かけるたびに気分が上がりそうです。同僚の方などに自慢すると思います。ありがとうございました。

ART IN THE OFFICE 2025完成作品

マネックスグループ ART IN THE OFFICE 2025 受賞作品について、詳細はこちら
作品のメイキング動画リンクはこちら

鬼原美希《福来旗(フライキ)》2025年/大漁旗、漁網、イカ釣り漁具、ウキ、ウキ用ロープ、ボンデン旗、カゴ型漁具、養殖網、海産物保管用ネット、テント、浮き輪、店頭用のぼり旗、米袋、園芸ネット、傘、雨ガッパ、ショッピングバッグ、Tシャツ、レジャーシート、ビニールシート、非粘着テープ、ポリエチレンロープ/w10000×h1700 (mm)
《福来旗(フライキ)》部分

鬼原美希 プロフィール

2012年多摩美術大学大学院修士課程テキスタイルデザイン研究領域修了。日常生活で感じたことをはじめ、世界中を旅し体感してきた、各国での染織文化や織素材の多様性、現地に住まう人々や動物のあり方、そこで経験した出来事をもとに、様々な素材を使ってタペストリーを織っている。綴れ織る行為を「 体験したことを記憶に刻み込むこと」「人と人との関わり」「作品に込める祈り」として捉え活動を続ける。
主な展覧会に、個展「muziki」(2025、ギャラリー白樺、鹿児島)、「Orange」(2025、江夏画廊、麻布台)、「W」(2024、いりや画廊、入谷)、「たびするおりびとmeets調布と映画」(2023、調布市文化会館たづくり、調布)などがある。今後は、白水郷アートプレイス(熊本、2026年6月13日[土]〜7月15日[水])、zenzaiマージナルギャラリー(鹿児島、2026年12月30日[水]~1月25日[月])にて個展を開催予定。

 

マネックスグループ株式会社について
MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表わしています。常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指しています。個人の自己実現において重要な要素である「資産形成」を中核事業としてきたマネックスグループですが、教育、ゲノムプラットフォーム、メタバースを含む、金融領域に限らないさらに広いフィールドへと踏み出し、個人のウェルビーイングの向上を目指します。https://www.monexgroup.jp/jp/index.html

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マネックスグループ株式会社 ブランドデザイン室 渡辺
Tel: 03-4323-8698

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E-mail: otoiawase@a-i-t.net


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