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The BAR (Backers Foundation / AIT Residence Programme) vol.13

The Bar vol.13 参加アーティストの佃七緒さんと大和美緒さんを紹介

バッカーズ・ファンデーションとAITは、2007年からアーティスト・イン・レジデンスプログラム(通称:The BAR)を通して協働を続けています。
その1回目から10回目まで毎年、国外より2名のアーティストを約3ヶ月、1名のキュレーターを1ヶ月日本に招聘して、滞在中のリサーチから制作された作品を展覧会で発表してきました。中南米やアフリカ、東南アジアより初来日となったアーティストも多く、リサーチは双方にとって有意義な学びの場として発展させ、意欲的な創作活動を紹介しました。
11回目となる2019年より、国内のアーティストにも新しい経験の機会をもとに創作活動の継続と促進を図ることを目的として、毎年2名を選出し、それぞれのアーティストの目的に合わせ、これまでのアーティスト・イン・レジデンスプログラムの枠組みにとらわれず、国内外での幅広い活動を支援しています。

2019年参加アーティスト:千葉正也さん | 横山奈美さん
2020年参加アーティスト:占部史人さん | 川内理香子さん

2021年の本プログラム参加アーティストと、プログラムを通したふたりの活動を紹介します。

佃 七緒 | Nanao Tsukuda
1986年大阪府生まれ。
2015年京都市立芸術大学大学院 美術研究科工芸専攻陶磁器分野修了。現在、大阪府を拠点に活動。
これまでも大阪や京都をはじめ国内外のレジデンスプログラムで制作を行う。それぞれの土地に住まう人々の、日々の生活を構成する道具・家具・住居などの具体的な情報や、その中で行われる営みの様子を元に、ドローイングや陶素材、生活の中で馴染みのある素材を中心に用いて、立体および空間制作を行う。作品を通し、他者の生活を表象した「カスタマイズ」の一部を意図的に抜き出し提示する。鑑賞者が、自然と他者の思考や行動の経過の一部を辿り、想像力を働かせるきっかけとなるような空間づくりを試みている。
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《包む》ことを通して

「このプログラムでは、《包む》ことを通して、葬送の儀礼や誰かを悼む/想うことについて考えるプロジェクトを始動しました。様々な文化の葬送において、亡骸の移動・状態変化・時間の経過ごとに儀礼が挟み込まれることと、《包む》ということで起きる状態変化や移動、時間の経過とを重ね合わせ、他者の手を借り作品を包んでもらいました。
具体的には、私の制作した陶片を受け取った方がそれぞれの想いと素材で包み、再び私に返送するというものです。陶片は私の手を離れ、他者の包む行為と私の知らない時間を纏ってまた手元に戻り、その経過を想像することは、新たな作品へのきっかけとなっています。

バッカーズ・ファンデーションのメンバーにも、このプロジェクトに参加していただきました。多種多様な状態変化を遂げた包みと、そこに込められた他者の面影に接し、モノとしての力強さに圧倒されながらも、次の作品とこの先の《包む》ことにつなげる方法を模索したいと思います。」

大和 美緒 | Mio Yamato
1990年滋賀県生まれ。
2015年京都造形芸術大学大学院 総合造形領域修了。現在、京都府を拠点に活動。
油絵具を用いて細密に描かれたドットやペンで一本一本引いた線から構成されるRepetition(反復)シリーズを発展させる。具体的な完成イメージを持たず、純然とした動作の繰り返しの果てに立ち現れる画面は有機的で、時間の経過をキャンバスに内包しながら、身体性のリアリティも印象に残したイメージが紡がれる。自然の摂理に従って木が一つ一つ年輪を重ねていくように、さまざまな素材と身体、行為を通して、崇高な自然の有り様やシステムを可視化することを試みる。
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撮影:麥生田兵吾 (Photo by Hyogo Mugyuda)


なぜ作品をつくるのか」を問う時間

All images ©️Mio Yamato, courtesy of the artist

「この度はバッカーズの皆さま、AITの皆さまにご支援いただくという大変貴重な機会に恵まれました。
このプログラムのお話を頂いた当初は、まさにパンデミックが世界中で猛威を奮っていました。私たちがこれまで積み上げてきた日常に急激な変化が必要となった時期で、展覧会の予定が次々とキャンセルになってしまいました。展覧会を含め、あらゆる場面で再開の目処が立たない状況の中、スタジオを維持するために奔走する日々が続きました。多くの方がそうであったように、私も困難に直面する一人でした。そんな折、このプログラムに参加させていただいた事がどれほどありがたい事だったでしょうか。
実際に、プログラムでは新しい作品を沢山制作する時間ができました。また、より深くモチーフやテーマを追求するため、これまでご縁のあったところから精密な電子顕微鏡を購入して観察に使うなど、制作の過程を通しても多くの方とコミュニケーションをとりました。私がなぜ作品をつくるのか、そしてどのように社会と関わるのかということに、改めて向き合う機会となったと思います。この経験は、これからの活動の糧となってくれると思います。」

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海外の文化機関や財団との協働を通じて、多領域で活動する芸術家や研究者を日本に迎え、知識と経験を共有する国際交流の場を創出しています

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