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The BAR (Backers Foundation / AIT Residence Programme) vol.14

The Bar vol.14 参加アーティストの山本愛子さんと横野明日香さんを紹介。
画像:金作原原生林。ガイドの常田さんと植物に触れながら歩く(撮影:山本愛子)

バッカーズ・ファンデーションとAITは、2007年からアーティスト・イン・レジデンスプログラム(通称:The BAR)を通して、国内外のアーティストやキュレーターへの創造活動にサポートを続けています。
プログラムの発足1回目から10回目までは、毎年、国外より2名のアーティストを約3ヶ月、1名のキュレーターを1ヶ月日本に招聘して、滞在中のリサーチから制作された作品を展覧会で発表してきました。中南米やアフリカ、東南アジアより初来日となったアーティストも多く、リサーチは双方にとって有意義な学びの場として発展させ、意欲的な創作活動を紹介しました。
11回目の2019年より、国内のアーティストにも新しい経験の機会をもとに創作活動の継続と促進を図ることを目的として、毎年2名を選出し、それぞれのアーティストの目的に合わせ、渡航を伴うアーティスト・イン・レジデンスプログラムの枠組みにとらわれず、キュレーターやギャラリストによるメンタリングも加え、国内外での幅広い活動を支援しています。

2019年参加アーティスト:千葉正也さん | 横山奈美さん
2020年参加アーティスト:占部史人さん | 川内理香子さん
2021年参加アーティスト:佃 七緒さん | 大和美緒さん

2022年の本プログラム参加アーティストと、プログラムを通したふたりの活動を紹介します。

山本愛子 | Aiko Yamamoto
1991年神奈川県生まれ。
東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了。平成30年度ポーラ美術振興財団在外研修員として中国で研修。国内外のレジデンスや展覧会に参加。自身が畑で育てた植物や、国内外から収集した植物を用いて染料をつくり、土着性や記憶の在り処を主題とした作品を制作している。
主な展示に2021年「Under 35 2021」BankART KAIKO(横浜)、2019年「Pathos of Things」宝蔵巌国際芸術村(台北)、「交叉域」蘇州金鶏湖美術館(蘇州)など。
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植物にまつわる創造力

奄美大島での染色デモンストレーション

人は植物を、薬用・食用・染料・塗料・繊維など、さまざまなかたちに用いて、その恵みを享受しています。私は制作において染織を扱うため、染料・繊維としての植物という視点から、植物を観察して活用することが多く、常に植物に対する自身の視野をもっと広げたいと考えています。プログラムを通したリサーチ「植物にまつわる創造力」では、植物に関わるあらゆる職種の方との交流から、人と植物の関係と自然界における植物の役割を多角的に学ぶことができました。

奄美大島の自然物で染められた糸
横須賀美術館でのワークショップ

リサーチでは、北海道美瑛町(藍畑づくりと藍染め、藍の食用方法を学ぶ)、神奈川(漢方薬の肥料づくり)、長野(多津衛民藝館と個人美術館Fenberger houseにてメンターでもあるAITのロジャーマクドナルド氏と意見交換)、奄美大島(大島紬リサーチ・アサギマダラのマーキング・ネイチャーガイド/環境保護活動家との交流・奄美大島の植物採集と染色実験会の開催ほか)、京都(漆の植林地、染織の歴史リサーチほか)、奈良(薬草のまちとしても知られる宇陀松山エリア。日本最古の「森野旧薬園」訪問。染織の歴史リサーチほか)など、国内のあらゆる場所に足を運びました。

外来種を染料にすれば、あなたの仕事は環境保護活動になる

北海道にて

染織の施設、園芸店、ネイチャーガイド、環境保護活動家、野草でものづくりを楽しむ団体など、植物にまつわるたくさんの方々と交流し、これまで想像したことのなかった植物との関わり方に、大きな驚きと感動がありました。特に、奄美大島で出会った環境保護活動家の助言では「外来種を染料にすれば、あなたの仕事は環境保護活動になる」という言葉をもらい、実際に自分のワークショップで実践しました。漢方薬を用いた肥料で育てられた米や野菜を試食し、余った部分を染色の材料にいただくなどの交流が生まれ、今後もこうした経験を日常的に継続し、自分の住むエリアの生態系をより良くするような植物採集方法を探していきたいと思います。

横須賀美術館でのワークショップ「NATURE COLOR PICNIC」
撮影:すべて山本愛子 Courtesy of the artist

横野 明日香 | Asuka Yokono
愛知県生まれ。
2013年 愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士前期課程 油画・版画領域 修了。現在、愛知を拠点に活動を行う
ダムや高速道路などの公共建築物から、ポットや花瓶といった日常にあるものまで、幅広いモチーフを油彩で描く。人がものを見ていかに空間を感じるのかということに関心があり、構図やタッチ、絵の具の重ね方や色彩など、絵画の基本的要素を用いてそれを表現している。
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熊本県阿蘇市へ

火の国と呼ばれ、水害に地震、噴火といった災害が続いているこの地は、以前から地球のエネルギーを感じる非常に興味の惹かれる場所でした。実際に足を運び、その自然のエネルギーや蠢きを肌で感じ、現地を徒歩や車、さらにはヘリコプターに乗って上空から眺め、全身で風景を味わいたい。その体験を制作に影響させたいとプログラムを通して感じていました。前に訪れた時は、野焼き直後の黒い風景だったため、今回は、新芽の緑の風景も観察して、季節の変化にも着目して絵画のモチーフとしたいと考えました。

作品で描いたことがある米塚も、真上から見るという体験ができた。想像と実際の上空の眺めは大きく違っていた。緑に覆われた米塚は、柔らかく丸く見えた。

実際に自然のエネルギーを全身で感じると、描くものだけでなく、描き方それ自体が表現の油絵において、自分なりのものの見え方をタッチや色彩・構図で表現して、感情を絵の具にのせたいと思うようになりました。興味を惹かれるモチーフは、私にさまざまな描き方を想像させ、阿蘇は私に大きな影響を与えてくれました。私は写真資料を元に制作もしますが、自分で撮影した阿蘇の上空写真は、今までに見たことがないような細やかな山肌のディテールまで捉えていました。

阿蘇を上空からじっくりと眺める
地球のエネルギーは、震災の爪痕としても残っている

少しでも制作と向き合うこと

一方で、プログラムの後半は、第二子の妊娠・出産の時期でもあり、思うように行動できないことや、社会との繋がりが感じられなくなってしまうこともありました。それでも自宅に展示・作業スペースを設けてオープンスタジオができるように環境を整えて、少しの時間でも制作と向き合う気持ちを大切にしました。

自宅の作業スペースに壁を整備
撮影:すべて横野明日香 Courtesy of the artist

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海外の文化機関や財団との協働を通じて、多領域で活動する芸術家や研究者を日本に迎え、知識と経験を共有する国際交流の場を創出しています

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