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オンデマンド・アート講座「生き方を育み合う美術館とアートの学び」

AITのオンデマンド・アート講座「TOTAL ARTS STUDIES Premier」(以下、TASプレミア)では、インストラクターの堀内 奈穂子と、ゲストの佐藤 麻衣子氏による 「芸術から眺めるこども、こころ、せかい」コース Series.4「生き方を育み合う美術館とアートの学び」を公開しましたので、お知らせします。

シリーズ4では、国内外の美術館やアートの学びの場が、どのように新たな機能や役割を模索しているのか、近年の生きた事例を主に紹介します。

ゲストに、2022年現在オランダでリサーチを行うアートエデュケーター、佐藤 麻衣子さんをお迎えします。国内の美術館で携わった多様な人々との活動事例やエデュケーターの役割をご紹介いただき、後半は、ゴッホ美術館やボイマンス美術館の事例を取り上げ、オランダの主要な美術館で行われている、多様な文化背景を持つ若者との画期的なプログラムにも触れ、堀内との対話を通してさまざまな視点からアートの学びの可能性を考えます。

近年、一部の美術館やアートスペースは作品鑑賞だけでなく、アートの考えを活用し多様なコミュニティを柔らかくつなぐ学びのツールとして機能しています。本シリーズでは、dearMeの実践や国内外の美術館の多様な人々に向けたさまざまな事例を通して、「生き方を育み合う場」としてのアートを考えます。

6回を通して学べること

・美術館におけるエデュケーターの基本概念

・国内/海外美術館におけるユニークな教育普及施策の事例とその可能性

・子どもたちや障害のある人、多様な人々とのアートを通じた協働の事例 など

本シリーズがおすすめの人

・「インクルーシブ」を理解し、実践する機会にそなえて学びたい人

・子どもたちと接する機会のある人、子どもとともに学びたい人

・教育や福祉などに関わる仕事をしている人

・美術館エデュケーター(教育普及学芸員)という職業に興味のある人

・美術館や図書館、児童館で働く人 など


Series 4. 「生き方を育み合う美術館とアートの学び」

芸術から眺めるこども、こころ、せかい」コースより

インストラクター:堀内 奈穂子(AITキュレーター / dear Meディレクター)
ゲスト:佐藤 麻衣子(アートエデュケーター)
レクチャー数:6 [ 各20 – 30分 ]
使用言語:日本語
視聴期間:90日間〜
料金:1650円(税込)〜 プランによって異なります

① 生き方を交差させる場としての美術館

これまでのシリーズでは、フレーベルやデューイなど、実験的な学びを確立した教育者が、芸術を学びの中心に据えながら、子どもたちが表現を通して自然との関係性や社会を想像し、精神を育むツールとなってきたことを紹介してきました。20世紀以降は、特に美術館やアートスペースなどでも鑑賞者に豊かな芸術の体験を提供する教育プログラムが発展してきます。

本シリーズでは、MoMAなど美術館での教育プログラムの歴史を簡単に振り返りながら、よりさまざまなコミュニティや文化背景、特性を持つ鑑賞者を迎え共に過ごすことが求められる近年において、美術館を人々の「ツール」として捉え、その機能を刷新するような特徴的な実践を紹介します。また、AITのdearMeが行う、さまざまな特性を持つ人々に向けたプログラムの事例にも触れて考えます。

② 美術館の教育普及の概要と役割  

ゲストにアートエデュケーターの佐藤麻衣子さんをお迎えします。本レクチャーでは、佐藤さんが水戸芸術館現代美術センターで教育普及担当学芸員(=アートエデュケーター)として携わられた経験を元に、その役割や鑑賞者との関わりの基本理念を改めてお聞きします。


アートエデュケーターは、展覧会関連ワークショップの企画、子ども向け鑑賞ガイドの制作、美術館ボランティアの育成、学校見学の受け入れなどをしています。美術館が教育普及の学芸員を置く第一の理由は、そこがいつでも、誰でも、主体的に学べる社会教育の場所であるべきだからです。また、エデュケーターは展覧会を企画して来館者を待つだけではなく、美術館に来場しない人について考える想像力、地域や社会の課題・問題に目を向けるような仕掛けを考え、実現していく重要な役割を担っています。果たして美術館はどこまで多様性に向き合えるのでしょうか?社会と美術館をつなぐ教育普及の仕事から考察します。

日本の美術館での実践:水戸芸術館現代美術センターの事例より

佐藤さんが2021年まで勤務した水戸芸術館現代美術センターで企画・運営したプログラムの実例を紹介しながら、具体的な実践をもとに、教育普及の役割について理解を深めます。


紹介する事例
1.様々な対象に向けたプログラム(赤ちゃんと保護者/発達障害のある子どもと家族/学校)、2.市民ボランティアの育成、3.視覚障害者との鑑賞会


プログラムの目的は事例ごとに異なります。本レクチャーでは、こうした企画の出発点から、プログラムの様子、終了後のフィードバックまでを企画・運営に関わった経験から佐藤さんが伝えます。全体を見渡すことで、美術館が社会に果たす役割について、多角的に検証する視点を得ることを目標にしています。また、近年関心が高まりつつある「対話型鑑賞」についても取り上げます。解説パネルや音声ガイドを利用する鑑賞とは異なる方法を紹介します。

写真提供: いばふく(いばらき中央福祉専門学校)撮影協力:特別養護老人ホームもみじ館

④ オランダの美術館の教育普及プログラム

④と⑤の2回にわたり、佐藤さんが2022年にオランダで調査した美術館の事例を紹介します。

オランダは多様な人種が集まる国であり、特にアムステルダムは18-30歳の若者の1/3以上が、二つ以上の文化背景を持つと言われています。これは、美術館の来場者層にどう反映されているのでしょうか?ゴッホ美術館の調査によると、このような人たちの多くはほとんど美術館を訪れることはないことがわかっています。インクルーシブな美術館を実現するため、次世代に向けてプログラムを行う美術館の事例を紹介します。


紹介するプログラム
1.ゴッホ美術館「ビールドブレーカーズ」(多文化のバックグラウンドを背景に持つ若者雇用プロジェクト)、2.ボイマンス美術館「クンスト/ヴェルク」(職業訓練校の生徒を対象にしたアーティストとの協働プログラム)

⑤ 対話が変える美術館の姿

ここでは、佐藤さんによるレクチャーの総括として、教育普及と展示が一体となったユニークな美術館の取り組みを紹介します。


オランダの南ホラント州・リッセという人口2万人ほどの小さな町にある美術館LAM。スーパーマーケットを運営する企業が母体となり、徹底的に教育普及に特化した活動を展開しています。掲げられたコンセプトは、作品についてどう思うかを鑑賞者自身で考え、自分の言葉で話すこと。そのため、運営は至ってシンプルです。美術館に当たり前に存在すると考えられている、モノや機能は削ぎ落とされています。例えば、アーティストや作品名を記したキャプションや説明パネルは、一切ありません。一方で、監視スタッフには鑑賞者と作品の前で会話する役割が求められます。
対話が中心になったとき、展覧会や美術館はどのような姿になるのでしょう。また、なぜそのような美術館が生まれたのか、その背景や、これからの美術館について考えます。

多様な生き方を映し出す芸術の体験とは?

本シリーズ最終回では、ここまでのレクチャーを振り返りながら、佐藤さんと堀内による対話を通して、レクチャーで紹介しきれなかったオランダのファンアッベ美術館(Van Abbemuseum)のプログラムや、レクチャー1でも取り上げたドルハウス美術館(Het Dolhuys)に訪れた佐藤さんの考察をお聞きします。また、これまでのシリーズでも取り上げた「アート処方」の観点でも、芸術の体験が個人の気づきや人々の関係性に及ぼす有用性について、オランダの事例を手がかりに考えていきます。

シリーズ全体を通して、芸術の体験は即時的な変化を生むものではなく、ゆっくりと生き方や考え方に浸透するからこそ、子どもや大人に限らず、あらゆる人々にとって主体的な気づきを生むツールになり得る可能性があることを紹介していきます。

美術館の教育普及の概要と役割【サンプルレクチャー】