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オンデマンド・アート講座 Series2公開中

AITのオンデマンド・アート講座「TOTAL ARTS STUDIES Premier」(以下、TASプレミア)では、ロジャー・マクドナルドによる 「崩壊の時代の芸術体験」コースより、Series.2「宇宙意識から生まれるアートと鑑賞体験」を公開しましたので、お知らせします。

テーマは、「芸術体験が、いかに人間の意識状態を変えていくか」

6回のレクチャーで構成される本シリーズでは、ロジャーがこの数年研究してきた「ディープ・ルッキング」という観察方法を含め、東洋・西洋の美学論を紹介しながら、「宇宙意識」から芸術体験を考えるとてもユニークな内容となっています。
15世紀半ばに描かれたフラ・アンジェリコの受胎告知や、イングランド出身の音楽家ブライアン・イーノが提唱する活動「市民回復センター」なども紹介し、新たな倫理観や生き方について思考を深めます。各20分〜30分程度のレクチャーになっていますので、仕事の合間や通勤途中など、都合の良い時間と場所から気軽に視聴できます。
美術鑑賞や芸術体験が私たちにもたらす影響や仕組みについて興味のある方、西洋と東洋の美学論を比較したい方にもおすすめです。
美術館やアートスペースでの作品鑑賞も、このレクチャーを視聴した後には、今までとは違う体験になるかもしれません。

みなさまのお申し込みをお待ちしています。


宇宙意識から生まれるアートと鑑賞体験 – Art in Cosmic Consciousness and Viewing Experience

「崩壊の時代の芸術体験」コースより

インストラクター:ロジャー・マクドナルド(TASプログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長)
レクチャー数:6 [ 各20 – 30分 ]
使用言語:日本語
視聴期間:90日間〜
料金:1650円(税込)〜 プランによって異なります

① ラサ:ヨガとインド古典美学

インド古典美学から、芸術の有用性と精神性を考えます。特に「ヴェーダーンタ」思想がもとになった「ラサ」という考えを探り、芸術作品が鑑賞者の身体と心に直接影響する仕組みについてお話しします。アート体験は、強烈な感情体験でもあります。美術史ではヨーロッパ美学にフォーカスしがちですが、ここでは、インド美学のもう一つの優れたアプローチについて学びます。

②山でさまよう:中国古典美学 

中国古典美学と中国の思想家である荘子(そうし)の視点から、芸術体験を考えます。特に、芸術体験は美しさを感じることだけではなく、精神的な超越体験であることに迫ります。中国宋時代の風景画にスポットをあて、また、研究者ミランダ・ショーによる論文を参照しながら、山水画と神秘体験や仏教の関係性について考えます。

③ 芸術と体験:ジョン・デューイ 

ドイツ理想主義の美学とは異なる考え方を広く提示した、アメリカの哲学者ジョン・デューイの思想を通して、芸術と生活の関係を考えます。デューイは、アートはただ「観察する」ものだけではなく、いかに私たちの生活体験に深く介入できるかを語りました。最終的に、芸術は人間を変革する「強烈なエネルギー」として捉えることができるといいます。崩壊の時代において、あらためて芸術文化の意味や役割を考える上で、こうしたデューイのアプローチは非常に参考になるでしょう。

④ ディープ・ルッキング

近年、特にインターネットの発達とともに私たちの観察力や集中力は大きく衰えてきたとも言えるでしょう。このように考えると、時代の変化に伴い、私たちの生活だけではなく、アート体験の質も大きく変わってきたといえるでしょう。そして再び、私たちはどのように観察力を鍛え「みる力」をつけていけるのでしょうか。セザンヌやアグネス・マーティンのようなアーティストからヒントを探り、ディープ・ルッキングの重要性に迫ります。

⑤ フラ・アンジェリコ:受胎告知の謎

15世紀半ばに描かれたフラ・アンジェリコの受胎告知をケース・スタディーとして鑑賞し「みること」の不思議さや不完全さについて考えます。特に、フランスの思想家ジョルジュ・ディディ=ユベルマンの分析を参照しながら、絵画の限界と「知識を手放す」体験について追求します。崩壊の時代において、芸術体験の重要な要素のひとつは「想像に降伏すること」だと思います。

⑥「身をまかす」ための空間:市民回復センター

これからの時代には、どのような美術館やアートスペース、公共芸術空間が必要になるのでしょうか。これらを追求した先例のひとつに、ブライアン・イーノが提案した「市民回復センター」があります。私の住む長野県佐久地域のコミュニティーでも、芸術の有用性とコレクティブヒーリングの要素を融合した総合芸術スペースが、2年前から実践されています。私たちはどのように支え合いながら、芸術を通してほんの少し「身をゆだねる|surrender」ことができるのでしょうか。こうした体験から生まれる精神やコミュニティーの回復の可能性を探ります。