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シリーズ2「コミュニティ、ケア、コモンズを通して希望を取り戻す」

本シリーズでは、美術館を、より民主主義に根ざした、エコロジカルな実践の場として活用することについて考えます。
危機の時代に美術館という場所は、いかにしてケアと集団の喜びの空間へと変貌しうるのでしょうか。また、芸術家たちは人間のスケールを超えた地球の変化をどのように表現や活動に反映してきたのでしょうか。また、気候危機を美学の観点から考察しながら、予測不可能な状況において、芸術と美学が現代において果たす役割について、ゲストを迎えて深掘りします。

Total Arts Studies Labo 約1ヶ月間集中して学ぶ少人数制・対面型のコース
ラディカルな美術史:エコロジーとケアの新たな物語 — ターナーからジョーン・ジョナスまで
シリーズ2「コミュニティ、ケア、コモンズを通して希望を取り戻す」

期間:2024年6月13日(木)〜7月4日(木)
時間:19:00-21:00( 120分 / レクチャー75分+ティー&コーヒー・ディスカッション45分)
場所:代官山AITルーム
回数:全4回 
定員:16名 ※最少催行人数あり
料金:39,600円(税込) ※オンデマンド・アート講座「TASプレミア」付( 24レクチャー / 視聴期限なし / 13,200円相当)、参考文献リスト付
申込締切:2024年6月6日(木) 

ゲスト(敬称略)
伊東多佳子(富山大学 芸術文化学部 准教授)*セッション4

インストラクター
ロジャー・マクドナルド(TOTAL ARTS STUDIES プログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長 / 多津衛民藝館館長)、堀内奈穂子(AITキュレーター / ディア ミーディレクター)

* 各シリーズの最終日には交流会を開催予定です。
* ご欠席される場合は、後日オンラインにて録画したセッションをご視聴いただけます(期間限定 / ダウンロード不可 / 転載不可)。
* 料金には、セッション代のほか、オンデマンド・アート講座「TASプレミア」( 24レクチャー / 視聴期限なし / 13,200円相当)、ドリンク・お菓子代が含まれています。
全シリーズ(1〜3)申込みの方にはセット割引もご用意しています。

1. システムの端に生きる:アートとコミューン運動

6月13日(木)ロジャー・マクドナルド

19世紀後半、インドや日本、ヨーロッパでは、芸術を日常生活やコミュニティ、エコロジーや社会運動など、ラディカルな政治と結びつけ、新しい精神性や全人格的なヴィジョンを再認識する試みが行われました。
工芸や農業などの生活実践をキーワードに、イギリスの評論家・美術評論家ジョン・ラスキンや、モンテ・ヴェリタ(スイス)の芸術共同体、武者小路実篤、白樺運動などの先駆者たちの著作と行動、そして最近のアーティスト・コミューン運動などを紹介し、オルタナティヴな美術史について考えます。

2. アートとラディカル・ケア

6月20日(木)堀内奈穂子

アートの実践から見るラディカル・ケアについて考えます。ケアは、個人および社会的なつながりの維持に不可欠でありながら、ケアをする側 / される側といった構造を強化してきた経緯も持っています。本セッションでは、特にフェミニストの実践の系譜を紹介しながら、ケアを他者に「与える」ものではなく、現在の不安定な時代の中で、抑圧的であったり脆弱な状況を他者と「ともに」理解するための一つの手がかりとして考えます。このセッションの後半は、テーマから連想するハーブティーを楽しみながら、参加者同士で意見を交換します。

3. 非常時の博物館:新たな民主的衝動

6月27日(木)ロジャー・マクドナルド

本セッションでは、公共とコモンズの表現に根ざした芸術の「民主的」な一面に着目します。第二次世界大戦中、イギリスやスウェーデンの美術館はコミュニティの避難所となり、戦後、ニューヨーク近代美術館MoMAは、先駆的なアウトリーチ・プログラムを考案しました。観客に広くアートを紹介するための複製品の役割などを取り上げ、ケアとオープン・アクセスの倫理を通じてアートを民主化した美術館やスペースの歴史が、脱炭素化の問題とどのように結びついているかを明らかにします。

4. 気候崩壊時代の芸術における新たな展開と未来への期待

7月4日(木)伊東多佳子 ※オンライン参加、ロジャー・マクドナルド

気候変動と生物多様性の喪失により、かつて相対的に安定し、調和が保たれていた自然界と私たちの関係は急速に変化しています。予測不可能な状況が多発する時代において、今日、芸術と美学はどのような役割を果たすのでしょうか。このセッションでは、比較的新しい分野である「環境美学」を研究する伊東多佳子氏をゲストにお招きし、芸術と想像力の未来を考察する上で、私たちが再考しなければならない最重要課題の一つである気候崩壊について美学の立場から概説します。
*セッション終了後に交流会を開催します。

ゲスト
伊東多佳子(富山大学 芸術文化学部 准教授)

1963年神奈川県生まれ。日本学術振興会特別研究員、高岡短期大学講師を経て、2004年4月助教授、2005年10月より現職。 主要論文として「自然哲学としての環境美学の試み-環境芸術からのアプローチ- 」(2001年)、「失われた風景──環境芸術のゆくえ」(2002年)、「自然と人工/芸術のあいだ : デイヴィッド・ナッシュの環境芸術作品をめぐる考察 」(2015年)、「環境美学—自然や環境をそれ自体として観照することは可能か」( 2020年)、「急激に加速する人間の活動による気候変動の時代における芸術と環境美学」(2020)などがある。

インストラクター

ロジャー・マクドナルド(TOTAL ARTS STUDIES プログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長 / 多津衛民藝館館長)
東京生まれ。イギリスで教育を受ける。学士では、国際政治学。修士では、神秘宗教学を学ぶ。博士号では、『アウトサイダー・アート』(1972年)の執筆者ロジャー・カーディナルに師事し美術史を学ぶ。長野県佐久市に移住後、2013年に実験的なハウスミュージアム「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。AITでは、設立メンバーの一人として、現代アートの学校MAD(Making Art Different)やTAS(TOTAL ARTS STUDIES)のプログラムディレクションなどを担当。主な著書に、『DEEP LOOKING(ディープ・ルッキング)想像力を蘇らせる深い観察のガイド』(2022年、AIT Press)。美術手帖が運営するアートポータルサイトにて、気候危機とアートについての連載記事シリーズ「Art and Climate NOW」を掲載中。2024年より「平和と手仕事多津衛民藝館」(長野県佐久市)館長に就任。

堀内奈穂子(AITキュレーター / ディア ミーディレクター)
エジンバラ・カレッジ・オブ・アート現代美術論修士課程修了。2008年より、AITにてレジデンス・プログラムや展覧会、シンポジウム、企業プログラムの企画に携わる。ドクメンタ12マガジンズ・プロジェクト「メトロノーム11号 何をなすべきか?東京」(2007)アシスタント・キュレーター、「Home Again」(原美術館、2012)アソシエイト・キュレーターを務める。国際交流基金主催による「Shuffling Space」展(タイ、2015) キュレーター、「Invisible Energy」(ST PAUL St Gallery、ニュージーランド、2015)共同キュレーター。アーカスプロジェクト (2013) 、パラダイスエア(2015、2016)、京都府アーティスト・イン・レジデンス事業「大京都in舞鶴」(2017)のゲストキュレーターを務める。 2016年より、AITの新たなプロジェクトとして、複雑な環境下にある子どもたちとアーティストをつなぐ「dear Me」プロジェクトを開始。アートや福祉の考えを通した講座やワークショップ、シンポジウムを企画する。


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< TASオープン「What is Art Today? — 深化するアートの世界」
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