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シリーズ1「変革としての芸術:絵画、音楽、文学からみる抵抗」

植民地時代や産業化、近代社会がもたらした「権力」や「破壊」に対して、芸術家たちはどのように反応し、それぞれの時代を生き抜いてきたのでしょうか。本シリーズでは、18世紀以降のヨーロッパにおける芸術と工業化、帝国主義の関係性をはじめ、19世紀後半にヨーロッパ、インド、日本など多くの地域で盛んになった農民や農村による抵抗運動などを取り上げ、権力に抗うオルタナティヴなライフスタイル運動の歴史を紐解きます。今日の気候危機の問題が生まれた歴史を辿るとともに、当時の芸術家たちの表現や運動、思想による抵抗をはじめ、文学の役割と批評性を通してこれからを生きる手がかりを探します。

Total Arts Studies Labo 約1ヶ月間集中して学ぶ少人数制・対面型のコース
ラディカルな美術史:エコロジーとケアの新たな物語 — ターナーからジョーン・ジョナスまで
シリーズ1「変革としての芸術:絵画、音楽、文学からみる抵抗」

期間:2024年5月16日(木)〜6月6日(木)
時間:19:00-21:00( 120分 / レクチャー75分+ティー&コーヒー・ディスカッション45分)
場所:代官山AITルーム
回数:全4回 
定員:16名 ※最少催行人数あり
料金:39,600円(税込) ※オンデマンド・アート講座「TASプレミア」付( 24レクチャー / 視聴期限なし / 13,200円相当)、参考文献リスト付
申込締切:2024年5月9日(木) 

ゲスト(敬称略)
小野正嗣(小説家、早稲田大学文化構想学部教授)*セッション4

インストラクター
ロジャー・マクドナルド(TOTAL ARTS STUDIES プログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長 / 多津衛民藝館館長)

* 各シリーズの最終日には交流会を開催予定です。
* ご欠席される場合は、後日オンラインにて録画したセッションをご視聴いただけます(期間限定 / ダウンロード不可 / 転載不可)。
* 料金には、セッション代のほか、オンデマンド・アート講座「TASプレミア」( 24レクチャー / 視聴期限なし / 13,200円相当)、ドリンク・お菓子代が含まれています。
全シリーズ(1〜3)申込みの方にはセット割引もご用意しています。

1. 帝国主義と支配に抗う表現者

5月16日(木)ロジャー・マクドナルド

帝国主義と奴隷制の暴力と抑圧の歴史の中で、芸術家たちがどのようにその状況を描いたのかを紹介します。最も有名な海洋画家の一人であるウィレム・ファン・デ・フェルデ(オランダ)や、マオリの人々の肖像画を描いたことで知られるチャールズ・フレデリック・ゴールディ(ニュージーランド)など、芸術家たちはヨーロッパの植民地主義をどのように表象したのでしょうか。そしてそれらが時に権力によって利用されてきた背景も紹介します。
本セッションでは、作品をじっくりと観察する ディープルッキング*を実践したり、作品が制作された時代の音楽鑑賞タイムを挟みながら、より身体的に作品を体験します。

*音楽:オー・フリーダム – ゴールデン・ゴスペル・シンガーズとリヒャルト・ワーグナー「神々の黄昏」より
ディープ・ルッキング:ロジャー・マクドナルドによる書籍。深い観察(ディープ・ルッキング)の歴史的背景とその実践について、具体的な事例も交えながら、アート観察を通じて困難な現実を乗り越える実践から生まれた独自の方法論を提案している。

2. 産業化と近代生活、孤独

5月23日(木)ロジャー・マクドナルド

18世紀後半の産業革命にさかのぼり、現代へとつながる生態系破壊の歴史的なルーツを探ります。芸術家たちは、近代化において生じた環境の破壊的過程をどのように描き、批判しようとしたのでしょうか。ウィリアム・ターナー、ウィリアム・ホガースなどのイギリスの画家や、印象派のクロード・モネやエドゥアール・マネ、ベルト・モリゾなどの作品を紹介しながら、芸術家が産業革命と日常生活の近代化をどのように描いたのか、労働や風刺、ジェンダーの視点から考えます。初回と同様に、作品をじっくりと観察する ディープ・ルッキングと、作品が制作された時代の音楽を聴きながらじっくりと考えます。

*音楽:ヴォーン・ウィリアムズ:トマス・タリスの主題による幻想曲、ドビュッシー:夢想曲

3. 大地、労働、自由

5月30日(木)ロジャー・マクドナルド

都市化が急速に進み、人間と環境の関係がより不均衡になった時代の農民や農村労働者の生活と、芸術家の表現に着目します。ジャン=フランソワ・ミレー、カミーユ・ピサロ、ヴァン・ゴッホなどの芸術家は、機械化が加速する時代において、失われていく農村文化や自然をどのように描いたのでしょうか。 本セッションでは、その時代の芸術家たちが資本主義に抵抗するために、アナキズムや社会主義といった新しいイデオロギーをどのように取り入れて活動したのかを考察します。ここでも、ディープルッキングと音楽の時間があります。

*音楽:ドヴォルザーク、交響曲第9番「新世界」第2楽章、ラルゴ、ベートーヴェン、交響曲第6番「牧歌」ピアノ編曲、リスト、グレン・グールド

4. 気候緊急事態時代の新しい物語: 文学は私たちをどう導くか?

6月6日(木)小野正嗣、ロジャー・マクドナルド

私たちは今日、不安定な社会を生き、世界におけるオルタナティヴな在り方へと向かうために、新たな想像力の地平を必要としています。
歴史を振り返ると、社会が大きな危機に直面した時、文化の根底にある深い感情や欲動をはじめに表現するのは、多くの場合、詩人や小説家でした。
加速する気候危機の今、文学者たちは何を書き記すのでしょうか。
本セッションでは、小説家の小野正嗣氏をゲストに迎え、近年の文学研究における環境批評や自身の著書をもとに、気候変動と生物多様性の喪失がもたらす社会的・心理的な困難を乗り越えるために、文学の分野から有用な指針をお聞きします。
*セッション終了後に交流会を開催します。

©講談社

ゲスト
小野正嗣(小説家、早稲田大学文化構想学部教授)

1970年大分生まれ。東京大学教養学部卒業。パリ第8大学博士号取得。2013年十和田奥入瀬芸術祭に小説「…to watashi, towadashi」出品。第18回全国障害者芸術・文化祭おおいた大会(2018年)ではオープニングステージの脚本を手がける。主な著書に、『にぎやかな湾に背負われた船』(2002年、朝日文庫、第15回三島由紀夫賞)、『マイクロバス』(2008年、新潮社)、『獅子渡り鼻』(2013年、講談社)、『九年前の祈り』(2014年、講談社、第152回芥川賞)、『歓待する文学』(2021年、NHK出版)などがある。2016年には「新潮11月号」において、日本で難民申請をする難民のルポルタージュ「東京スカイツリーの麓で―あるコンゴ人難民の受難の物語」を発表。2018年から2024年までNHK「日曜美術館」のキャスターを務める。

インストラクター

ロジャー・マクドナルド(TOTAL ARTS STUDIES プログラム・ディレクター / フェンバーガーハウス館長 / 多津衛民藝館館長)
東京生まれ。イギリスで教育を受ける。学士では、国際政治学。修士では、神秘宗教学を学ぶ。博士号では、『アウトサイダー・アート』(1972年)の執筆者ロジャー・カーディナルに師事し美術史を学ぶ。長野県佐久市に移住後、2013年に実験的なハウスミュージアム「フェンバーガーハウス」をオープン、館長を務める。AITでは、設立メンバーの一人として、現代アートの学校MAD(Making Art Different)やTAS(TOTAL ARTS STUDIES)のプログラムディレクションなどを担当。主な著書に、『DEEP LOOKING(ディープ・ルッキング)想像力を蘇らせる深い観察のガイド』(2022年、AIT Press)。美術手帖が運営するアートポータルサイトにて、気候危機とアートについての連載記事シリーズ「Art and Climate NOW」を掲載中。2024年より「平和と手仕事多津衛民藝館」(長野県佐久市)館長に就任。


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