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美術手帖にて公開|アートと気候危機のいま vol.4 アーティスト兼環境リーダー、ジェーン・ローソン(前編)

TOTAL ARTS STUDIES(TAS) プログラム・ディレクター、ロジャー・マクドナルドによる、美術手帖ウェブ版での気候危機とアートについての連載記事シリーズ「アートと気候危機のいま|Art and Climate NOW」。海外の動向の「いま」をわかりやすく紹介する連載の第4回は、マンチェスターを拠点に活動するアーティスト、ジェーン・ローソンへのインタビューへのインタビューをお届けします。


私たち人間の活動はいま、地球規模の視点で見たとき、どのような状況に置かれているのだろうか。英国出身アーティスト、ジェーン・ローソンによる「ダイアグラム(情報を図式や抽象的な図形で視覚的に表す方法)」作品シリーズは、それを淡々と、かつ端的に私たちに訴えかける。

ジェーン・ローソン Progress has stopped making sense (but there is still neighborliness)  2018 Photo by Jules Lister

この作品の発端は、自身が参加した気候変動対策キャンプ(地球環境への意識を高めるための集会)だった。世界の金融システム、地球の気候変動史、英国のEU離脱(ブレグジット)への道、民主主義に対するテクノロジーの影響など、人間社会を形成する経済的、歴史的、地理的、生物学的プロセスや構造を理解するために図式化されたものだ。

 もともとフリーのニットウェアデザイナーとしてキャリアをスタートしたローソンは、大学で視覚芸術学を学び、ラディカルなアート/デザイン集団「UHC」の立ち上げや、英国における気候変動対策キャンプの草分けと言われている3つのキャンプにスタッフとして携わった経験があるほか、エシカル消費を牽引する雑誌で企業倫理に関するリサーチャーとしても奔走した。

 その後、マンチェスターにある「キャッスルフィード・ギャラリー(Castlefield Gallery)」のコーディネーターを経て、現在は同ギャラリーでアーティスト兼、環境リーダーとして活動している。

Camp for Climate Action 2008 Photo by Jane Lawson

アーティスト活動の傍ら、気候危機にまつわるネットワークへの参加や立ち上げにも熱心だ。例えば、マンチェスター・アート・ギャラリーのコレクションをもとに気候正義に関する学びと行動を促すプロジェクト「クライメート・ジャスティス・ギャラリー(Climate Justice Gallery)」を共同企画したクライメート・ジャスティス・グループ(Climate Justice Group)の一員であり、キャッスルフィード・ギャラリー主催のプロジェクトでは、イギリス北西部を拠点に“低炭素アート”を実践するアーティスト・ネットワーク「SPARK」の設立にも関わった。

 2022年、アート分野で環境課題に取り組む国際的ネットワーク「ギャラリー気候連合(Gallery Climate Coalition (GCC))」に、日本からは初となるメンバーに加わった我々AITにとっても、気候危機に問題意識を感じている日本のアーティストやギャラリスト、活動家とどう協働し、この地球規模の課題にアクションを起こせるのかを早急に考えていく必要がある。

 そんななか、私は、英国でこの課題に対して精力的に活動するジェーン・ローソンに、改めてアートと気候危機の関係性についてどう考え、これからアーティストやアートセクターの人々とどのようなネットワークを築こうとしているのか、インタビューを行った。

記事の続きを読む(ウェブ版美術手帖)>>>

TOP画像:ジェーン・ローソン Pink Oyster Mushrooms Detoxifying Milton Friedman 2012


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