
大隈理恵(AIT)
テキスト:大隈理恵(AIT)
AITでは日頃からさまざまな企業とお仕事をしていますが、最近特に私が気になっているのが企業内の部活動の活発さです。社員同士のつながりを深めるだけでなく、企業間での交流へと広がる動きも見られています。
そんな中、以下のような興味深い記事も発見しました。
企業アート部が職場を変える!本業にも貢献 東急・野村総研・アクセンチュア…アートが生むコミュニティhttps://art.nikkei.com/magazine/2883/
日本経済新聞
AITが運営協力を行っている「ART IN THE OFFICE」を主催するマネックスグループ株式会社にもアート部があり、部員のみなさんのアートへの情熱や造詣の深さにはいつも驚かされるとともに、私たち自身も多くの刺激を受けています。
昨年、彼らが他企業のアート部と交流を行ったと聞き、AITでも「こうした活動の横のつながりを、さらに広げられないだろうか」と考えるようになりました。そこで、ボトムアップ型の企業アートプロジェクトの先駆例として知られる「NIKKEI アートプロジェクト」にも尽力し、アートプラクティショナーとして活動する東孝彦さんにも相談し、進め方や東さんのネットワークを通じて多くの協力をいただきました。
AITが行う教育プログラム「MAD」や「TAS」には、多くのビジネスパーソンが受講しています。そうした方々にも相談しながら、2025年6月某日、代官山にてAITとご縁のある企業を中心に、10社のアート部の部長(代表)をお招きし、交流会を開催しました。
今回は、部活動を行う企業だけではなく、企業内の有志の集まりからボトムアップでアート活動を事業化し、当時としては、先駆的な試みを行っていた方もお招きし、さまざまなアートとの関わり方について、情報交換を行いました。運営の悩みから、未来への展望まで、示唆に富んだ交流となったその様子をレポートします。
<参加企業と部活動名>
・アクセンチュア株式会社|芸術部
・株式会社電通|美術回路
・東急株式会社|アートクラブ
・東京建物株式会社|アートクラブ
・株式会社日本経済新聞社|NIKKEI アートプロジェクト
・株式会社野村総合研究所(NRI)|アート部
・マネックスグループ株式会社|アート部
・コインチェック株式会社|アート部
・EY Japan株式会社|アートクラブ
・株式会社シグマクシス・ホールディングス|文化部
部活動のかたちは多種多様
美術、音楽、伝統芸能など、アートとの関わり方は企業ごとにさまざまです。部活動の名称にもそれぞれの思いや個性が感じられました。
例えば、アクセンチュアの芸術部では、約450名という大規模な部員数を誇り、社外にも活動を開いています。活動内容もユニークで、美大生とのコラボ企画による社内展示や、アーティストや展覧会の支援も積極的に行っています。
また、野村総合研究所のアート部では、部員や元社員を講師に迎えて、音楽や漫画、映画などの魅力を語るトークを開催。かつての社員とも継続的な関係を築く場として活用されているそうです。
東京建物とEY Japanのアートクラブでは、カードゲーム「PLAY!たぐコレ」や「レゴブロック」、フィルム写真「写ルンです」を用いて、独自のワークショップを開催。ほかにも、少人数ながら、金曜夜の美術館を訪れて鑑賞会を行うなど、地道な活動を積み重ねている新設アート部もありました。多様な感性に触れる部活動を通して、社員同士の交流や心身のリフレッシュだけにとどまらない、さまざまな工夫や取り組みが紹介されました。


「アートを通して職場や社会に良い変化を生み出したい」という熱意
部員数やリソースの違いはあっても、「アートを通じて人とつながりたい」という想いはどの企業にも共通していました。特に印象的だったのは、どの企業も「部長(代表)の熱意」で支えられていること! 業務との両立に悩みながらも、アートに触れることを心から楽しむ姿勢が、交流会全体に熱気をもたらしていました。
また、事業を円滑に行うための共通言語をつくるために、ビジネススキルとしてのデザイン・アート思考を取り入れる試みや、アートを単なる趣味の領域に留めず、ビジネスへの活用や事業展開を視野に入れている部活動もありました。そこでは、社内の理解を得る難しさや、費用対効果の不透明さ、他社との差別化など、多くの課題が挙げられました。しかし、数字だけでは測れない新しい価値観の醸成や、未来の事業展開につながる可能性も多く語られ、アートがもたらす効果に期待と関心が寄せられました。
仲間・資金・制度――部活動が抱える課題
多くの部が抱える課題として、「魅力的なコンテンツを増やしたい」「運営を一緒に担ってくれる仲間を見つけたい」「参加者のコミットメントを高めたい」といった運営上の課題がありました。加えて、「部費が出ない」「活動が個人に依存している」「自分が辞めたら部が終わってしまう」といった不安の声も。活動資金に関しては、各社で状況が異なり、補助が充実している企業もあれば、個人負担で運営しているケースもあります。今後は、企業内の部活動が社内制度としてより整備され、持続可能な仕組みとして根づいていくことが重要な課題と言えるでしょう。


これからのアート部
交流会では、「企業アート部同士での合同イベントをしたい」「食文化やサブカルチャーにも触れていきたい」といった新たなアイデアや展望も生まれました。
今回の交流会を通じて、企業アート部は、社員の感性を刺激し、新たなつながりを生む場であると同時に、企業文化を形成する重要な存在であることを改めて実感しました。そしてもう一つ、今回の交流会の魅力を語るとすれば、それは、新しく出会うアート部の方々とも、一緒に企業のアートプログラムを展開できる可能性が広がっていること。初めての出会いから、一緒に面白いことを形にしていく、そんなワクワク感がありました。
AITが中心となって企画しているこの活動ですが、今後はもっといろんな方と繋がり、アート部の活動が企業の垣根を越えて広がっていくことを期待しています。もしこのブログを読んで「うちの会社にもアート部がある!」と思った方がいらっしゃれば、ぜひご一報ください。
一緒に、もっと楽しいアートの輪を広げていきましょう!
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