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ART IN THE OFFICE 2022平松可南子氏のワークショップ「色を動かす、対話する」

「ART IN THE OFFICE 2022」(企画・主催:マネックスグループ株式会社)の受賞アーティスト、平松可南子(ひらまつかなこ)さんによる社員向けワークショップ「色を動かす、対話する」が7月6日に開催されました。

「ART IN THE OFFICE」は、“現代アートが未開拓の表現を追求し、社会の様々な問題を提起する姿勢に共感し、現代アートの新進アーティストを支援する場づくりをしたい”という想いのもと、マネックスグループが2008年から継続しているプログラムで、AITは開始当初から運営協力を行なっています。また、毎年、選出アーティストとともにワークショップやイベントの企画・実施もしています。

今回、4つの異なるグループ会社から20名の社員の方が参加しました。

左、中央:ワークショップのための参考画像   右:平松可南子 《噴水》 2022 1700×2400×2220(mm)/Acrylic on plywood box

平松可南子さんは、一見同じように見えるものでも、すべての事象はその瞬間ごとに常に変化していることに着目し、変遷や記憶の蓄積を作品に反映しています。自然がもたらす出来事や、時に動物と物の関係性などを丁寧に観察し、抽象表現へと昇華させていきます。 近年は特に「噴水」をモチーフに、さまざまなアプローチで水の飛翔の差異や動きの表現を試みながら、絵画の可能性を追求しています。

ワークショップでは、平松さんから抽象的な表現の背景にある思考やアイディアについてお聞きした後、グループに分かれてパステルやクレヨン、絵の具を使い、紙の上に自由に線を描いたり、上から色を重ねながら、思い思いに描く/消す体験をしました。

日々の偶然のできごとからアイディアが生まれ、新たな表現へ

はじめに、平松さんの自己紹介として、スライドでこれまでの作品を紹介しながら、制作への想いとその過程を共有しました。
そのひとつのエピソードで、平松さんが美術大学の学生時代に毎日作品を制作するチャレンジをしていたときのこと、鳥のかたちに整えたパンをつくり、地面に置いて観察をしていました。

しばらくすると、いつしかそのパンの周りには、どこからか運ばれた落ち葉の欠片や砂がぐるりと積み重ねられていました。それは、ちいさな蟻たちがせっせと運んできたものでした。

左、中央:平松可南子 ありととりの観察  右:平松可南子《ピートとリピート(ありととり)》2022 1750×2400×40(mm) Acrylic on canvas

興味深く観察していた平松さんは、今度はパンを持ち上げ、少し離れたところに置いてみます。すると、その落ち葉や砂を、蟻たちがパンの方にふたたび運んでいくのだそう。パンを移動させるたび、蟻はこうした行動を繰り返し、それを見た平松さんは後日、その動きの様子を絵画表現に展開していきました。

そのほか、自身の部屋での実験では、水飲み鳥の仕掛けつきのコップに対しての飼い猫の反応を観察。
人間の思い通りにはならない動物の行動と、それによって変化する水、その時に窓からさしていた光や感じた風、そうした偶然性を、空間の中のさまざまな関係性として考察していきました。

平松可南子《In case of Drinking birds and cat.》2019 / 4’52 / Movie works /cat,plywood,cup,clay,straw,greenwing 

絵はモチーフを示しているだけでなく、描く側の痕跡や動き、そういったものの蓄積であること。その場の空気や天気、いろんな要素が入ってくる。見たままじゃなくてもいいんだ!ということに気づいてもらえたらと思います
___平松可南子

身体の動きで、いろいろな線を描いてみよう

平松さんの抽象表現の背景にあるアイディアをシェアした後は、実際に線を描くウォーミングアップを行いました。目の前にあるクレヨンから好きな色を1つ選び、手に持ちます。

平松さん「まずは、肘(ひじ)だけを使って、2分間、線を描いてみてください」
肘を起点に、手首を固定した動きのストロークで、紙の上に色々な線が描かれていきました。同じ条件であっても、それぞれ異なる特徴があり、どれひとつとっても同じ線はありません。

「次に、その半分の時間で、手首の動きだけで、線を描いてみてください」
今度は手首だけの動きで、1分間、線を描いていきます。制限があることによって、線への意識や工夫が生まれていきます。

「最後は、身体全体を使って、10秒で描いてください 悔いのないように」
この10秒間は、いままで制限されていた動きを解放し、大きく身体を使った線を試してみます。カウントダウンと終了の掛け声で、ストップ。参加したみなさんの顔には、身体の動きとともに緊張もほぐれたのか、笑顔がみられました。

この時間は自由に、童心に戻って過ごしてほしい、はじめてのことをやってみることが大事。
失敗するくらいが一番いいと思います。

___平松可南子

描いてみる/消してみる」記憶から紡ぎ出す、さまざまな表現

いよいよ、自分だけの作品づくりに挑戦。

最近気になったエピソードや印象的な記憶、ふと思いついたことなどから、その時の気持ちや動きを線や色、形に置き換えて抽象的に表現していきます。
参加者には、事前に次のメッセージを送り、当日参加していただきました。

「夜寝る前など、空いている時間で結構ですので、ひとつの出来事について考えてみてください。
最近気になった印象に残っている出来事や、リラックスしている時間、例えば昨日の夕飯のことでも、ペットのことでも、休日の好きな過ごし方についてなどでも構いません。短い時間で良いので、何かしら気になった出来事について、思い返してみてください。
ご準備いただくことは以上です」


ユニークなのは、平松さんがあらかじめ1枚1枚ペイントした紙を用いて、その上に好きな画材を使って重ねていくということです。描くだけでなく、色を積み重ね、また色で消していくということを行いました。

前半の線を描くウォーミングアップや、平松さんの制作エピソードもひとつのヒントになったのか、思い思いに画材を手に、創作が進みます。

最後は、できた作品をそれぞれホワイトボードの好きな場所に貼り、俯瞰で眺めながら、みんなで感想を共有しました。

ひとりひとりの思い出や記憶、その時の気持ちから、個性あふれる色々な表現が生まれました。
昨日の夕飯で食べたサラダやお刺身、焼き鳥とビールを思い浮かべて線や形を描く人もいれば、最近引越しをした時の自分の気持ちや動きを表現した、という方も。飼っている犬との時間、また、家族と出かけた想い出の場所とその時にみた印象的な風景を描いている方もいました。
そして、ちょうど開催された日が選挙前だったこともあり、人々のさまざまな異なる意見や考えと、そうした社会の雰囲気を絵に反映した、という方もいました。

「抽象表現」への難しい思い込みを一度取り払い、身近なこととつなげることや即興で表現してみる楽しさや、クレヨンやパステル、アクリル絵の具などを使い実験的な描写を体感する時間になりました。

消すことは悪いことではなく、重なり合った要素は、見えていないけれどその痕跡が残っています。
時には思い切って「消す」ことも大事なのです。
___平松可南子


本ワークショップから生まれた、社員のみなさんが描いた絵の抽象的なモチーフや線の表現は、その後、平松さんの手によって、滞在制作中の壁面作品に付け加えられました。完成した新作は、一年間マネックスグループ本社のプレスルームに展示されます。受賞作品の写真や作家のコメントは、ART IN THE OFFICE ウェブサイト(マネックスグループHP内)にて発表します。


・参加者のコメント(抜粋)


表現は自由!仕事や日常の生活では「こうあるべき」という考えにとらわれることが多いので、もっと自由でいいんだ!と気づかせてくれる素敵な時間にりました。アーティストのお話や参加者の絵を通してたくさん刺激をいただきました。


直接アーティストと触れ合える機会に立ち会えてとても良かったです。平松さんからの最後のメッセージがとても心に響きました。手が止まったときは、一度白く塗り直ししていい、という言葉に感動しました。


平松さんがとてもわかりやすく説明をしてくださり、壁を感じずにワークショップに参加できました。色々な画材を使えたことも私にとっては非日常で、楽しかったです。


とても刺激的で楽しく、アーティストの方とも話せて楽しかったです!実際に手を動かすのはいいですね。

抽象画、抽象作品、はっきり言って苦手でした。でも感じるままでよいこと、自分なりの評価でよいことを学びました。


平松 可南子 プロフィール


1997年大阪府生まれ。2022年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究室修了。ペインティングやインスタレーションを表現手段とし、鑑賞の中で変容する経験を捉え直す試みを行っている。これまでの主な展覧会に、「Ghost of Peach」(2021年、とりときハウスギャラリー、東京)、「Innocent-P-」(2019年、京都国際会館、京都)、「Artist’s Tideland KYOTO」(2019年、伊勢丹新宿、東京)などがある。2020年「京都造形芸術大学卒業展」奨励賞受賞。

 

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MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来における人の活動を表わしています。常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化することを目指しています。個人の自己実現において重要な要素である「資産形成」を中核事業としてきたマネックスグループですが、教育、ゲノムプラットフォーム、メタバースを含む、金融領域に限らないさらに広いフィールドへと踏み出し、個人のウェルビーイングの向上を目指します。https://www.monexgroup.jp/jp/index.html

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